東京都府中市にある学校法人明星学苑 明星小学校。2022年4月より、クラブ活動としてダーツが導入されています。この連載では、小学校のクラブ活動としてダーツを導入することによりどんな変化や成長が見られたかをレポートしていこうと思っています。
本格的なクラブ活動が始まって、丸1年。今回は1年間の活動を通して起こった変化や、改めてわかったこと、次年度への課題などを担当の先生に伺いました。
これまでの活動レポートはこちらからご覧ください。
クラブ新設にまつわる苦労とサポート体制
ーダーツはこれまでクラブ活動では取り扱ったことのないスポーツだと思います。導入にあたり、先生方はどのように感じていましたか?
明星小学校は私立という点でニュースポーツについて比較的門戸が広いので、「ダーツ」を導入することについてハードルを感じることはほぼなかったですね。それはそれとして、クラブを新設するという点では手探りで運用しなくてはいけないのでそこについての苦労はありました(笑)。
小学生って微細な動きをするのが苦手な年ごろなので、ダーツ出来るかな?という不安はありましたが、思っていたよりも早くみんな慣れることができていて、その点はすごく安心しました。
ー立ち上げで苦労された点はどんな部分でしたか?
用意していただいた道具を使って、どうやってクラブをやっていくか1から考えなくてはいけないところですね。スポーツダーツプロジェクトさんに協力いただいて道具はたくさん手元にある状態でも、そもそもこの道具を使ってどうやって児童のみんなに夢中になってもらうか…というのを考えるのが大変で。クラブを開始してから、いろいろなことを試してようやく「今ここに困っているな」という点に気が付くんですね。そうなった段階ですぐに担当者さんに相談できるのはありがたかったです。
それと、クラブで使う教材も基本的には担当教師が作らなくてはいけません。既存のクラブだと例年使っているものがあるのですが…新しく作るのってすごく大変なんです。今回は教材もスポーツダーツプロジェクトさんに用意いただいたので、その点すごく助かりました。
個人競技だけど、異学年交流にも適している
ー児童のみなさんが夢中になったのはどんなゲームでしたか?
1~20のエリアに数字順にダーツを当てて、最後にブルに当てるというゲームですね。児童たちがみんなある程度ダーツを的に当てられるようになってから取り入れたのも良かったと思います。最初から取り入れていたらあそこまで盛り上がらなかったかもしれないので、タイミングも大事だったなと。
ークラブ活動の目的である「異学年交流」との相性はいかがでしたか?
クラブには4~6年生の3学年の児童が所属しているのですが、異学年でもチームメイトを一生懸命応援しあったり褒め合ったりしていて非常に盛り上がりました。技術的には高学年の児童がやはり上手だったりするんですが、チームメイトが目標の数字に当てたときに成績報告をしてくれるのは4年生だったりするんです。ダーツは個人競技なのでどうやって異学年交流につなげていこうか試行錯誤しましたが、やり方を工夫することで異学年交流に活かせたかなと思います。
「コロナ禍」という状況にマッチしていた「ダーツ」というスポーツ
ーコロナ禍でのクラブ新設ということで大変だった点はありますか?
実は、コロナ禍になって廃部になってしまったクラブがいくつかあるんです。サッカーなど、1つのボール(道具)に大人数が集まる競技が対象でした。不特定多数の児童と道具を共有しなくてはいけないという点が、コロナ禍のクラブ活動では大きい問題だったんです。その点、ダーツは基本的に「自分のダーツ」を3本使うので、懸念されていた問題をクリアできていました。個人競技ではあるけど、複数人でチームを作って一緒に楽しめるというのがコロナ禍のクラブ活動にうまくマッチしていたように感じましたね。
ー感染対策をしたうえでのクラブ活動でしたが、気になった点などはありましたか?
ダーツを投げるときに、マスクにダーツのフライト(羽根の部分)が引っかかってしまうので、それを避けて投げる動きが大振りになってしまう子がいたことですね。それとクラブ活動に限ったことではないんですが、口元が見えないとコミュニケーションってすごく大変だなと日々感じています。こちらの言っていることもうまく伝わらなかったり、相手にうまく伝わらないからこそ感情表現がオーバーになって急に泣き出してしまう児童もいました。今後徐々にノーマスク生活に移行していくのに合わせて、そのあたりもうまく対応していきたいです。
小学生大会へ参加したことで起きた変化
ー明星小学校ダーツクラブのメンバーも「スポーツダーツ競技大会」に参加されていましたね。
2名がペアで参加して、結果は3位でした。結果それが良い効果を発揮していて。大会に参加した児童が、大会後に目に見えてモチベーションがアップしたんですよ。
ー大会後に印象的だったことをぜひ教えてください。
クラブ活動のときに、これまで以上に積極的にみんなに指示出しなんかをするようになったことですね。なんというか、大会に出たことで少し「先輩感」をもった感じ(笑)。その2人を中心に、クラブ全体の意識も高まったように思います。上級生が率先して動いて、下級生はもっと声を出すようになって。非常に良い変化でした。
それと大会後のクラブ活動で、みんなでチーム戦をやっているときに「ここ1本で決めなきゃ」という場面で大会に参加した児童が20トリプルで勝利を決めたことがありました。「さすが、大会に出た人は違うなぁ!」と褒めたときの、彼の自慢げな顔がすごく印象的でしたね。
ー次回大会を開催する際に、どんなことがあると嬉しいですか?
こういった参加賞を用意してもらえるとみんなすごく喜ぶと思います。小学生ってやっぱりアイテムにすごく惹かれるので。前回参加した人には別のアイテムがあるとさらに嬉しいですね。
大会でなかなかいい成績が取れたこともそうですが、参加賞でもらったダーツが本当に嬉しかったようで。学校に「マイダーツ持ってきていいですか!」って言うので、もちろんどうぞと答えました。クラブの中でマイダーツを持ってちょっと自慢げにしている2人を、まわりのみんなが羨ましそうに見ていました。
あとは、できれば年に2~3回くらい大会があるとクラブの士気はもっと上がるんじゃないかなと思います。
令和の小学生は、実はすごく多忙!
ークラブ活動をしていて、困った出来事は何かありましたか?
1年間通してクラブ活動をしていると、ダーツに限らずどのクラブでもそうなんですが、中だるみややる気の落ち込みという波がある点ですね。年度の最終回にあたるクラブ活動では、受験シーズンが終わった直後ということもあって、6年生が少しナーバスだったり、気持ちにゆるみがあったりして。いつもはテキパキしているのに、あの日はなかなかダーツの設置が終わらなくて。部長(の児童)に状況説明をして、仕切り直す場面がありました。
ー年度の後半は、児童のみなさんもすごく忙しかったんですね!
そうなんです。受験や卒業式の準備に加えて、明星小学校では5~6年生はゼミ活動があるんです。それこそ大学生みたいに、レポートを作って、発表資料を用意して、プレゼンをして…といった流れなんですが、年度末にやることが本当にたくさんあって、クラブ活動にきてやっと一息つける!と思って、気持ちがゆるんでしまったのかもしれませんね(笑)。
実はそのゼミ発表で、ダーツのことをプレゼンした児童がいたんです。クラブ活動でダーツをやったのが、本当に楽しかったんでしょうね。資料づくりも発表もかなり上手くて、こちらも驚いてます(笑)。
2年目の課題
ー2023年度のダーツクラブの目標や課題について訊かせてください。
引き続き、クラブ活動の目的である「異学年交流」を大切にしていきたいです。活動2年目ということで、今年からは経験者の子とまったくの初心者の子が一緒にクラブ活動をすることになるので、技術差があるなかでどうやってうまく交流を深められるかという点は課題ですね。工夫してやっていきたいと思っています。
ダーツは、男女の違いや年齢差などがあっても、みんながクラブで活躍できるのが素晴らしいなと思います。実際、いまのところ男子のほうが割合は多いんですが、女子が全然活躍できてない!ということもなくて。また、ラッキーで高得点が取れたりすることもあるので、その偶然性に救われる児童もいると思うんです。運動に苦手意識がある児童にもチャンスがあるということで、技術差があったとしてもみんなで交流できるクラブになると思っています。
ー追加で取り入れたいアイテムなどは何かありますか?
1台でいいので…音の出るダーツを導入したいです! 児童のみんな、音とか、アイテムに本当に弱いんですよ! やる気ももっともっとアップすると思うので、今後検討したいですね。
明星小学校では無事2023年度もダーツクラブの活動がおこなわれることとなりました。今年度の活動も、引き続き支援し、児童のみなさんの成長に力添えしたいと思います。